東京ニュース

<社説>首相施政方針 政策転換の説得力欠く:東京新聞 TOKYO Web

 通常国会が始まった。岸田文雄首相は施政方針演説で、防衛力の抜本的強化、原発の建て替えや運転期間の延長方針などを表明したが、説明は不十分で説得力に乏しい。演説全体も、各府省から集めた文言をつなぎ合わせた印象は否めず、政治の信頼回復に向けた熱意を疑わざるを得ない。

 首相は、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有や防衛費増額を安全保障政策の「大転換」と位置付け、政策転換の理由に「戦後最も厳しく複雑な安保環境」を挙げた。敵基地攻撃能力がなぜ必要か、防衛費増額へ予算をどう積み上げるのかは説明しなかった。

 さらに、安保政策の転換は憲法や国際法の範囲内で行い、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての歩みを「いささかも変えるものではない」と強調したが、矛盾しているのではないか。

 原発政策については、脱炭素の要請やエネルギー危機に触れ「原発の次世代革新炉への建て替えや原発の運転期間の延長を進める」と表明した。安全の確保と地域の理解を大前提とするが、首相の主導による唐突な政策転換に、国民の理解が得られるだろうか。

 脱炭素やエネルギーの安定供給を図るのは当然としても、なぜ原発回帰なのか、国民生活にどのような影響が出るのかは語っていない。首相は原発回帰の重みを感じていないかのように映る。

 それに比べて力説したのが「次元の異なる少子化対策」だ。子育て支援に最優先で取り組む方針に異論はないが、予算倍増を目指すと言いながら、年限や財源を示していない。年限や財源を提示した防衛費増額とは対照的で、「異次元」という言葉だけが躍る。

 少子化対策を強調して、安保や原発を巡る政策転換への批判をかわす狙いがあるのではないか。

 首相は演説の冒頭「政治とは慎重な議論と検討を重ねた上に決断し、決断を国民の代表が議論し、最終的に実行に移す営みだ」と述べた。安保や原発を巡る政策転換が、慎重な議論と検討を重ねたとは到底言い難い。

 首相が、国民の代表で構成する国会審議を、自らの決断を実行するための手続きに過ぎないと考えているなら不問にはできない。

 あす代表質問が始まる。野党は首相の方針や政策転換の妥当性を厳しく問い、首相も疑問や不安に正面から答えるよう望みたい。



クレジットソースリンク

もっと見せて!

Related Articles

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Back to top button