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フランスの東京五輪中継はトップシェフが解説者!? マルクスさんインタビュー、柔道愛から日本通に:東京新聞 TOKYO Web

 フランスの公共テレビが今夏中継した東京五輪の開会式は、解説者の人選で注目された。元スポーツ選手らではなく、フレンチのトップシェフ、ティエリー・マルクスさん(62)が起用されたからだ。出店している東京とパリを頻繁に行き来しているマルクスさんに、仏料理界きっての日本通になった背景を聞いた。(パリ・谷悠己)

9月下旬、パリでインタビューに応じるティエリー・マルクスさん=谷悠己撮影

9月下旬、パリでインタビューに応じるティエリー・マルクスさん=谷悠己撮影

 ―解説者として東京五輪開会式をどう見たか。

 私の柔道への情熱と日本とのつながりを知るテレビ局側から解説の話をもらい、これ以上ない名誉に感じた。自然や職人技、美と実用性との融合といった日本を象徴する要素ばかりが登場する素晴らしい式だった。難しい状況の中で大会を成功させた日本に、多くの西洋人が改めて尊敬のまなざしを向けたと思う。

 ―柔道が日本への愛を生んだのか。

 13歳の時に映画館で、流行していたブルース・リー作品と間違えて稲垣浩監督の「宮本武蔵」を見て、「これだ」と思った。すぐ母親に「日本の武術を習いたい」と頼み、地元には空手や合気道の教室もあったが、一番安かった柔道を始めた。柔道が体も心も強くしてくれた。教室の先生はシベリア鉄道で日本へ旅行した経験があり、土産話を聞いて、日本の良いイメージがどんどん膨らんでいった。

柔道着姿のティエリー・マルクスさん=本人提供、ⓒMathilde de l’Ecotais

柔道着姿のティエリー・マルクスさん=本人提供、ⓒMathilde de l’Ecotais

 ―料理の仕事と日本が結び付いたきっかけは。

 柔道家として本気で五輪出場を目指したが、20代で競技はやめ、料理人になった。ミシュランガイドで1つ星を取れるようになった30代前半のころ、(日本の著名フレンチシェフの)三国清三さんから日本の彼の店で料理の実演をしてみないかと頼まれた。日本人の料理人らと一緒に仕事し、食材の切り方や焼き加減、旬の素材の使い方など、自分の未熟さを実感した。

 この経験は今も私の料理法に影響を与えている。三国さんは普通の西洋人では体験できないような場所も紹介してくれ、日本の文化を深く知るようになった。三国さんは私にとって日本での師匠のような存在だ。

 ―フランスで日本食が評価されるのはなぜか。

 フランス人は、古くは葛飾北斎の浮世絵、近年では安藤忠雄さんの建築のような日本文化から常に刺激を受けてきた。仏国内には(日本人で初めてミシュランの3つ星を獲得した)小林圭さんのように日仏の食文化をうまく融合した仏料理の店も数多くある。懐石のように複雑な日本料理は食する側にも一定の理解力が求められるが、フランス人にはその素地が備わっているのだと思う。

柔道とともに愛好する剣道を実践するティエリー・マルクスさん=本人提供、ⓒGerard Uferas

柔道とともに愛好する剣道を実践するティエリー・マルクスさん=本人提供、ⓒGerard Uferas

 ―日本の食材も人気を集めている。

 多少高くても手に入れたいと思わせる質の高さが、日本産品の強みだ。ただ、フランスの若手料理人の中に、日本の食材をむやみに使う傾向が見られるのは感心できない。何千キロも離れた輸送は環境面への負担が大きいからだ。昆布やかつお節の原料は仏国内でも手に入るし、私はみそも自分で造っている。若手たちには、自然や環境を大切にする和食の精神を、日本産品を使わなくても実現できることを理解してほしい。

 ―日本は第2の故郷だと感じているか。

 そのとおり。ただ、個人的には消費都市の東京より北海道や宮崎、飛騨高山や伊勢といった地方都市に魅力を感じる。日仏それぞれの地方都市を拠点とした事業の構想も持っている。旬の素材を収穫できる土地の近くに設けた日仏両拠点のレストランで、半年ずつ若手料理人に研修させる。日本が大切にする地産地消の精神を理解したシェフを育てるのが狙いだ。思いを共有してくれる事業パートナーを日本で探したい。

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