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3つ星シェフ・小林圭が語る、パリの日々と食への挑戦。 | Feature | Pen Online

二ガナを豆腐で和えた「ンジャナバースーネー」と、豆腐を麹に漬けこんで発酵させた、チーズのような味わいの「豆腐よう」。

ひとつひとつの料理に4種のワインを合わせてマリアージュを楽しむ。手前のボトルは「豆腐よう」や「らふてえ」といった沖縄の個性的な料理との相性が抜群によかった、ドメーヌ モンの「Dom gris 2018」。

メニューは二ガナの豆腐白和え「ンジャナバースーネー」と、豆腐を麹に漬けこんで発酵させた「豆腐よう」の前菜から始まった。沖縄で活躍するJSA認定シニアソムリエの前森裕人の見立てにより、1品1品試しながらペアリングし、相性を探っていった。

「豆腐ようの発酵感と、ドメーヌ モンのピノ・グリ種を使用したDom gris 2018が、ものすごくぴったりで、いきなり最初から驚きました。通常豆腐ようは紅麹で仕込みますが、美榮で提供されている豆腐ようは白麹が使われ、やわらかく、繊細で、やさしい味わい。それがオレンジワインによく合っていました。ンジャナバースーネーの苦みには、モンガク谷の白ワインがよかったです」

「なかみの吸いもの」は、豚の腸を何度も水洗いし、ショウガで煮て臭みを取り、鰹出汁と肉出汁で煮込む。

「芋くずあんだぎい」の赤い色素、ポリフェノールが赤ワインに合うのではと、前森はピノ・ノワールを合わせた。

豚の腸をていねいに下ごしらえし吸いものにした「なかみの吸いもの」。芋くず粉と蒸かしたサツマイモをこねて揚げた「芋くずあんだぎい」。豚肉を黒ごまのペーストに漬けこんで蒸した「みぬだる」に「田芋から揚げ」。琉球料理は下ごしらえにとにかく時間と手間をかけるのが特徴という、古波藏德子の話を聞きながら、ゆったりした時間とともに食事は続いていく。

「タカヒコさんのワインは自然のままにと表現されていますが、まさにお芋のように土の中で育つ食材によく合うと思います。芋くずあんだぎいのお芋の甘みと苦みみたいなものが、ピノ・ノワールの持つフルーティさ、心地よい苦みと共存しています」

お皿の右に置かれた「みぬだる」は、黒ごまをすりつぶしたものを砂糖、泡盛、醤油で伸ばし、これに薄切りした豚ロース肉を2~3日浸しておき、蒸して仕上げる。

JSA認定シニアソムリエの前森裕人。年に一度お客さんとともに旅をする、日本のワイナリー巡りを楽しみにしているそう。

「田芋もやっぱり土の中のもの、ピノ・ノワールがよく合います。砂糖醤油の甘みと風味に、タカヒコさんの出汁っぽいワインがマッチして、最後にピッと合う。黒ごまが香ばしいみぬだるには、70%のピノに30%のツヴァイゲルトが入ってスパイシーさが加わったパストゥグランがぴったりだと思います」

ワインの販売とワインイベントの企画を行う wine&interior CLASSICO ほか、日本ワインを楽しむワインバー「グラスワイン 桜坂 ル・ボア」を営む、JSAシニアソムリエの前森裕人は、「琉球料理のために造られたワインのようにどれも相性がよく、今までに感じたことがない琉球料理の新しい魅力を引き出してくれる」と、今回のペアリングの新しい発見に喜んでいた。

脂身がおいしい「らふてえ」は、ザラメや泡盛で煮込んだその甘みが、ピノ・グリの深い甘みによく合った。ゴーヤーの青い香りには赤ワインが合う。

「耳皮さしみ」。さしみとはいうが、和えもののこと。豚の耳とほほのコリコリした部分を水炊きにし、落花生と酢で作ったたれをキュウリと一緒に和えたもの。

「らふてえ」は豚の三枚肉を大きめに切って、醤油、泡盛、ザラメで半日以上気長に煮込んだもの。皮までやわらかくなったその味は、琉球料理を代表する逸品として人気の一皿。それに前森はドメーヌ・モンのピノ・グリを合わせる。
「らふてえの脂身や泡盛、ザラメの香りや甘みが、オレンジワインの深い甘みに驚くほどぴったりでした」

「『耳皮さしみ』は、モンガク谷ワイナリーの『モンガク谷2019杤』と相性がぴったりです。熟れた林檎のような果実味と爽やかでやわらかい酸味。優しく感じるのですが実は複雑味がある味わいは、ミミガー(豚の耳皮)のコリっとした触感、落花生を軽く焙煎した香ばしさ、きゅうりとピーナツ酢で和えた味わいによく合っています」

さらに料理は締めの「豚飯」(とんふあん)へとつづき、デザートの「鶏卵糕」(ちいるんこう)、「花ぼうる」で終わった。

「各ワイナリーのワインが、旨味があり深みがあり、いい意味で土や森を感じるような落ち着いた味わいでした。そこにしっかりした出汁や、時間や手間をかけた深い味わいが合わさる。その旨味や深み、熟成、発酵といった時間をかけて生まれてくるもの。それが今回の北海道ワインと琉球料理との共通点なのかもしれない」
マッチングのおもしろさを感じた、と前森は話す。

ニンジン、カステラカマボコなどを炊きこんだご飯に、豚のだし汁をかけてサラサラと頂く「豚飯」。

「鶏卵糕」は鶏卵をたっぷり使った蒸し菓子。「花ぼうる」はポルトガルから日本へ伝わったといわれるお菓子で、沖縄だけに残るカッティング技法で美しい文様に仕上げている。

美榮の料理は、まさにここでしか味わえない料理。沖縄の気候や風土、食事を頂く空間すべてが味に影響する。歴史的な背景や伝統を知り頂くことで、より味わい深くなるはずだ。

江戸時代から明治時代にかけての18〜19世紀頃、北海道で採れる「昆布」が大阪、鹿児島を経て琉球へと運ばれて沖縄の食文化に影響を与えていたという。そしていま再び、北海道と沖縄はワインによって新たな繋がりが生まれることとなった。

今回のこころみのなか、土地それぞれの魅力と同時に、二つの地を結ぶ共通の景色が見えた気がする。日本の地方がつながるために、東京というハブはもういらないのかもしれない。地方と地方の食文化が結びつく新しいカタチ。そこにある新しい出会いや発見を楽しみたい。


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